グライダーってなに?

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グライダーとは?と聞かれて、「白くて翼が細長くて、エンジンのついていない飛行機」が想像できれば、それは正しいイメージといえます。
でも、三角形のタコのような形をしていて、人がぶら下がった格好で乗るもの・・・実はハンググライダー・・・とか、時にはグラインダー・・・金属を削る機械・・・と一緒になってしまうこともあります。
では、グライダーって一体どんな乗り物でしょう。これからあなたの疑問にお応えします。

 

グライダーは何でできているの?

グライダーは、いろいろな材料から造られています。 旧式のグライダーは、鋼管羽布張りといって金属パイプの溶接で組み上げたフレームに羽布(はふ)と呼ばれる木綿の布を張って塗装を施した胴体と、木製の翼から出来ています。又、全木製モノコックと言って、胴体も完全に木製で、まるでボートの様な機体もあります。
もう一つの方法は、普通の飛行機と同じアルミ合金を使って造るやり方です。
そして最も近代的なのは、FRPといってガラスやカーボンの繊維にプラスチックの樹脂を染み込ませて 造る方法です。サーフボードやスキー、工事用のヘルメットなどと同じです。軽くて丈夫で、しかもどんな形にも成形可能です。曲線で出来ているグライダーを造るには最適の材料といえます。

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複雑な3次曲面で構成されたグライダーの流れるようなフォルムは、FRPを使うことで実現される。

どこで造っているの?

グライダーといえばなんといってもドイツ。ドイツ 1国だけで8000機ものグライダーが登録されています。ちなみに日本では350機。当然メーカーの数も多く、世界のグライダーの大部分がドイツで造られているといっても過言ではありません。
他には、フランス、ポーランド、ユーゴスラビアなどにもメーカーが有り、素晴らしいグライダーを沢山作っています。1960年代までは、日本でも純国産のグライダーが設計され、製造されていました。しかし、現在は日本には残念ながら工場は一つもありません。

グライダーにはどんな種類があるの?

グライダーは、日本では滑空機と呼ばれています。 航空法上、滑空機は二つの等級、すなわち上級滑空機と動力滑空機に分けられています。
上級滑空機とは、エンジンのついていないグライダー、動力滑空機とはエンジンがついたグライダーのことです。

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上級滑空機(グライダー)
エンジンはついていない。離陸は飛行機かウィンチによる。

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動力滑空機 (モーターグライダー)
①飛行機に似ているが、翼が長くエンジンを止めていても滑空出来るものをいう。
 
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動力滑空機 (モーターグライダー)               
②自力で離陸した後、上空でエ ンジンとプロペラを胴体内に格納し、グライダーに変身することが出来る。近年、特に人気が高まっている。 

この他に、最近は殆どありませんが、初級(プライマリー)・中級(セカンダリー)と言ったごく初歩的な練習機もあります。

1機いくらぐらいするの?

2人乗りのグライダーで800~1000万円くらい、1人乗りで400万円(練習用)から1200万円(競技用)くらいです。モーターグライダーは、1000~1700万円くらいです。 少し高価ですので何人かでグループを作って購入する、というのが普通です。
しかし寿命は長く、普通に使っていれば20~30年は飛行可能です。

重さは?

普通1人乗りで200~250kg、2人乗りで280~350kgくらいです。大きさのわりに軽く造られています。
また競技用のグライダーには翼に水を入れるタンクがあり、100~200lの水を積んでわざと重くして、速く飛べるようにしてあります。

何時間くらい飛んでいられるの?

上昇気流をうまくつかまえると、日の出ている間、5~6時間くらいは飛んでいます。しかし最終的には、長い時間飛ぶことよりもより長い距離をより速く飛ぶことのほうが目標になります。

グライダーの翼はどうして長いの?

翼の形は細長ければ細長いほど、翼の先端で生じる抵抗…誘導抗力といいます…が小さくなります。ですから、性能のよいグライダーほど細長い翼になっています。

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性能のいいグライダーほど、翼は細く、長い

この抵抗を減らすことで、前に進む性能… 滑空比という言葉で表します… を良くしているのです。

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グライダーって、なぜみんな白いの?

多くのグライダーは、FRP(強化プラスチック)製です。このFRPは熱(紫外線)には比較的弱い性質を持っています。ですから表面を白くすることで太陽光線を出来るだけはねかえし、熱を持たないようにすることが大切です。

風がないと飛べないんでしょ?

グライダーの飛行にとって、風は特に必要ありません。 まったくの無風状態から風速10m/sの強風まで平気です。
でも水平に吹く風よりも上に向かって吹く風が重要です。上に向かって吹く風に乗って飛行することをソアリング…日本語では滑翔…といいます。熱上昇気流と呼ばれる上昇気流を使うと、普通1000mから3000mの高さまで上昇することが 出来ます。また、山岳波という種類の上昇気流は10000m以上の成層圏にまで達しています。 もしこれらの上昇気流がないとグライダーは毎秒0.5~1mの割合で降下していきます。
ですからそれ以上の割合で上昇する 風を見つけることが大切で、うまくその風をつかまえるとグライダーは何時間も高いところを飛んでいることが出来ます。

上昇気流にはどんな種類があるの?

主に次の4つの種類があります。

A.斜面上昇風…Slope lift 風が山の斜面などにぶつかって生まれます。

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B.熱上昇風…Thermal lift 太陽熱で暖められた地面付近の空気が、浮力を得て上に昇ってゆきます。やがて積雲と呼ばれる雲になり、時間とともに消えてゆきます。

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C.山岳波…Mountain lee wave 山にぶつかった空気が、山の風下で振動して生じます。特に高々度に上昇することが出来ます。この上昇気流を使っての高度の世界記録は14000mにも達しています。

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D.前線上昇風…Frontal lift 性質の違う2つの気団がぶつかって生じます。大規模なものとしては寒冷前線、小規模なものとしては海陸風前線などの種類があります。

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これらの上昇風の中でも、特にBの熱上昇気流をよく利用します。
実際には、これらが複合した様々な形態の上昇気流に巡り合います。

上昇気流はどうやってみつけるの?

上昇気流には一定の色や形があるわけではありません。そして、普通は目に見えないものです。
ですからパイロットは様々な手がかりを使って上昇気流を捜し当てます。 手がかりとしては

  1. 雲の発達の具合
  2. 地形(山や峰、小さな丘等々)
  3. 地面の性質(太陽光線によって熱しやすいかどうか)
  4. トンビや鷲などの、滑空をする鳥
  5. 煙や埃の立ち昇り方、などがあります。

グライダーの動力は?

グライダーは自分の重さ(重力)を使って前進します。つまり真っ直ぐ落ちるかわりに斜め前方に向かって滑り降りるのです。
でもこの角度はとても浅く、地上から見ているとグライダーはほとんど水平飛行をしているように見えます。スピードのコントロールもこの「前に落ちる角度」で行っています。スキーを連想してください。スキーの動力はスキーヤーとスキーの重さです。緩斜面ではスピードはあまり出ませんし、急斜面では速くなります。グライダーも同じです。普通は80km~150kmの速度で飛行していますが、競技のときなどは200km~250kmの速度で飛行することもあります。

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グライダーって風まかせでしょ?

グライダーが離着陸するのを見物している人から「グライダ ーって風まかせで飛んでいるのに、よく同じところに降りてくるね」と質問されることがあります。
でもグライダーは決して風まかせではありません。グライダーの操縦席の中では、パイロットが一所懸命操縦しているのです。
操縦は基本的に補助翼(エルロン)、昇降舵(エレベーター)、方向舵(ラダー)の3つの舵を使って行います。これはグライダーや軽飛行機からジャンボジェット機まで、すべての飛行機に共通した操縦の方法です。

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安全性は?

グライダーは安全な乗り物です。空を飛ぶものの中でも安全 性は最も高い部類に入ります。その理由は、

  1. エンジンがないので、エンジンに起因したトラブルがない。
  2. 構造がシンプルで、コントロール機構も簡単なので故障が少ない。
  3. 華奢に見えても空中では丈夫に出来ている。
  4. 操作する機構が少なく、従ってパイロットの操作ミスによる事故が少ない。
  5. 飛行速度、特に着陸速度が遅く、万が一の場合でも安全に着陸出来る。
  6. 最初の練習から教官同乗なので、パーフェクトな安全管理が出来る。

などがあげられます。でもなんといっても物は使いよう。あとはパイロットの心がけ一つです。

どうやって飛び立つの?

2つの方法があります。ひとつはウィンチ曳航といって直径5mmくらいのワイヤーロープを1000m程にのばし、これを200馬力くらいのエンジンで回転するウィンチで巻き取ることによって、ちょうどタコをあげるようにグライダーを引っ張り上げる方法で、普通300m~400mの高度まであがります。

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この方法は最も経済的ですが、切り離す高度と場所が一定になってしまいます。因みにワイヤーの切り離しはグライダーの中 から操作ノブを引くことで行います。
もう一つの方法は、飛行機曳航といって軽飛行機に40mくらいの長さのナイロンテープをつけてグライダーを引っ張り上げる方法です。どこにでも、どんな高度にでもグライダーを連れて行くことができ理想的な方法といえますが、飛行機の運行や維持を含めて費用がやや高くなります。

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グライダーでどうして遠いところまでいけるの?

長距離を飛ぶには、まず上昇気流をつかまえて高いところまで上昇します。そこから滑空しながら次の地点へと向かいます。
たとえば1500mの高度から500mの高度になるまでまっすぐ進んだとすると、普通35~40km前進します。そこで次の上昇気流をつかまえてまた上昇し滑空する…。
これを繰り返してグライダーは長距離を飛行します。
世界記録はなんと3,000kmにも達しています。

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グライダーにはどんな計器がついているの?

速度計、高度計、昇降計、コンパスそれと無線機が基本です。
距離飛行や高高度飛行の必要に応じてさらにGPSや酸素吸入装置、グライドコンピューター(風向、風速や距離などの情報をインプットすると適当な飛行 速度を示してくれたりする)、管制自動応答装置(トランスポンダ)などを積んでいます。
しかし何より大切なのはパイロット自身の持っている五感と 「鳥になりたい」と思いながら練習しつづけることで開発される 第六感です。

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グライダーってスポーツなの?

グライダーはきわめてメンタルな要素の強いスポーツといえます。下から見ているとずい分優雅そうに飛行しているようでも、狭いコックピットの中でパイロットは上昇気流や下降気流と何時間にもわたって格闘しているのです。 
そして、スポーツである以上、世界選手権を頂点とし競技会が各地で開催されていますし、競技会でなくとも1人1人のパイロットは常に自分自身の記録に挑戦し続けています。
グライダースポーツの目標は次のように定められています。

日本滑空記章 
 A章・・・初めての単独飛行の達成
 B章・・・場周飛行に対して
 C章・・・滞空30分以上
 銅章・・・滞空2時間以上

国際滑空記章  
 銀章・・・滞空5時間以上、高度の獲得1,000m以上、飛行距離50km以上
 金章・・・滞空5時間以上、高度の獲得3,000m以上、飛行距離300km以上
 ダイヤモンド章・・・高度の獲得5,000m以上、300km以上の目的地距離
           飛行距離500km以上
 750km章・・・ 飛行距離750km以上
           以降、250km毎に滑空記章がある。

1,000km飛行と言うと、札幌~東京間よりも長い距離で、達成するのは非常に難しいといえます。スポーツマンとしてのグライダーパイロットは、いつまでも終えることのない自分の限界との戦いを一生にわたって続けているのです。

ライセンスはあるの?

軽飛行機と同じく国(国土交通省)が発行する自家用操縦士という資格があります。そして、車の免許に例えるなら、普通・大型・自動二輪などの限定があるように、空の免許にも①飛行機②グライダー③ヘリコプター④飛行船の4つの限定区分があります。ですから、グライダーで免許を取るとグライダーしか乗れませんし、軽飛行機で免許を取ると軽飛行機しか載れませ乗れません。

どうやったらライセンスがとれるの?

普通は、まずグライダーの同好クラブに入ります。そして二人乗りのグライダーでインストラクターと一緒に練習を開始します。練習用のグライダーには2つの座席それぞれにまったく同じ操縦装置と計器がついていますので、安全かつ効率的に操縦練習を行なうことができます。
そして、60~100回程の離着陸の練習を終えると、ファースト・ソロ(初単独飛行)といって初めて自分一人で空を飛ぶことになります。その後、さらに練習を重ねて、200~300回の離着陸回数、飛行時間が30~50時間になると、十分一人で安全に飛行できる操縦能力が身につきます。
そうすると、国土交通省の実施する筆記試験(年3回、3月・8月・11月に実施)を受験し、さらにそれに合格すると実地試験となります。実地試験は口頭試問と実技試験を行ないますが、試験官が滑空場まで出向いてくれます。この試験に合格すると、めでたくライセンスが交付されます。ライセンスを取るまでには、費用的にはおよそ50~80万円、経験的には最低2~3年は必要です。しかし、決して難しいものではありません。

グライダーの練習をはじめるにはどうしたらいいの?

グライダーの練習は、満14才以上で普通の健康体の人であれば誰でも始めることができます。
まず近くのグライダークラブに加入して下さい。費用的にはたきかわスカイパークの場合ですと入会金が5万円、年会費が4万2千円、そして1回の飛行料金が7,600円(中・高校生は1,000円)となっています。ですから、年間30回飛んだとすると、飛行料金はおとそ23万円(30,000円)になります。
操縦練習をはじめるにはまず操縦練習許可書の取得が必要です。この許可書は1年ごとの更新ですが、申請には簡単な身体検査を受けなくてはならず、これに1万5千円~2万5千円程度かかります。ですから年間に必要な費用はおよそ次のようになります。

  初年度 2年目以降 中・高校生
入会金 50,000円 0円      0円
年会費  42,000円  42,000円   3,000円
搭乗料 230,000円 230,000円  30,000円
身体検査費用(目安)  20,000円  20,000円  20,000円
年間費用の目安 350,000円 300,000円  50,000円

視力について心配する人が多いようですが、矯正で0.7程度あれば大丈夫です。運動神経は操縦適正には全く関係がないようです。野球でバットを振ってもなかなかボールにあたらない人がもっとも優秀なインストラクターだったりします。

操縦はむずかしいの?

グライダーの操縦には特別な能力は必要ありません。上達については早い人、遅い人がいるのは万事に共通ですが、「一人で飛びたい」という持続した情熱さえあれば、誰でも安全に飛行できるようになります。
スキーでいえば、はじめはゲレンデで転んでばかりいても、そのうちに恰好はよくなくても転ばずに楽しく滑ることができるようになるのと同じです。もちろんレースに出るくらいのレベルになるためにはたえまない努力と高い飛行能力が必要ですが、「楽しむために飛ぶ」ことができるようになるのは思いのほか簡単です。

北海道の空はグライダーに向いているの?

北海道の空はとてもきれいです。特に透明度が抜群です。ですから、グライダーで飛行していてもとても気持ちよく、北海道の美しい自然を空から思いきり満喫することができます。
そして日本の中で唯一、グライダーにとってもっとも大切な3つの要素がすべて整っている場所なのです。
その3つの要素とは、①豊富な上昇気流 ②自由な空域 ③広い土地 です。
グライダーにとって北海道は残された最後の楽園なのです。まさに、ダイヤモンド鉱山の眠る空といえます。全国からも、多くの人々がグライダーを楽しむために訪れていますし、種々の記録飛行が行われています。特に滝川は北海道の中央部に位置し、そのために長距離飛行の拠点としては最適の場所といえます。

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